「聖人の魂をめぐって争うのは、格下の仕事じゃなかったのか?」

「そう思うなら、お前こそ手を引け」

アズラーイールの剣が振り下ろされた。

俺はそれを煉獄の剣で受け止める。

のしかかるその重みに、俺は耐えた。

「彼の魂は、天界に向かうと明記されている。それを覆せると思うか」

「そんな嘘っぱち、誰が信じるもんか。死したる魂の行方は、それを最初に手にしたものに委ねられると決まっている」

アズラーイールの剣を、横に流す。

俺は振りかざした剣を、水平に斬った。

奴はさっと飛び退き、後ろに下がる。

周囲では、天使と悪魔の戦いが始まっていた。

「俺は悪魔だ。欲しいものを手にいれるために、手段は選ばない」

火球を飛ばす。

涼介の魂に手を伸ばそうとした俺の手に、打ち返された火の球が迫った。

俺は舌打ちしてそこを離れる。

すぐに光の剣が、襲ってくる。

激しい打ち合いを続けながら、魂の動きに合わせて、ゆっくりと上昇してゆく。

このままでは、本当に涼介の魂は、天界へ行ってしまう。

俺は渾身の一撃で、アズラーイールをなぎ払った。

「これ以上、邪魔するな!」

俺は涼介の魂に手を伸ばした。

その腕を光の剣が切り落とす。

俺はすぐに腕を再生させた。

もう一度伸ばした手の先に、アズラーイールが立ちふさがる。

ぶつかり合う光と炎の剣が、火花を散らした。