その炎を片手に集めると、ムカデの額に向かって投げつける。

それは堅い殻に覆われた眉間に当たり、はね返った。

「バカめ、その程度の火力で、私の体を燃やせると思うか」

体をひねり、大きな顎で噛みついてくるのを、俺はぎりぎりでよける。

スピードが上がっている。

アズラーイールの叩きつけた剣は、その堅さにカチンと火花を散らした。

「どうする?」

「殺虫剤でも持って来るか」

「お前がとってこい」

「魔界のより、天界の方が効くんじゃね?」

動きが速い。

空を覆う無数の脚が、ガシャガシャと不気味な音をたてる。

そこへいくら火球を打ち込んでも、どれも効果はなかった。

聖剣の放つ、光の刃も刃が立たない。

ムカデの尾が、俺たちをなぎ払った。

コンクリートの床にたたきつけられる。

鋭い刃物のような尾が、俺とアズラーイールの体を切り裂く。

腕から血が流れた。

「お前、魔界からもっと有効な武器を取り寄せろよ」

「武器庫の大事なやつを勝手に持ち出したら、サランに怒られるんだ」

「じゃあさっきのは?」

「玄関に飾ってあったやつ」

実践で戦ったことなんて、ほとんどない。

うちに魔道書ならたくさんあるが、武器庫にあるのは、どれもサランの趣味で集めた装飾用で、実践向きではない。

本物の剣だなんて、サラン相手に数回しか握ったことはない。

俺はいま自分の出せる火力を、最大限にまで引き上げた。

「これでお終いだ!」

その炎を、魔剣として結晶化させる。

それを片手に飛び上がると、両手で握り直し、狙いを定めた。