頷いた警察官は、別の写真をポケットから取り出して、亮一とトオルにそれぞれ見せた。
「こういう制服の学生は? この辺りではよく見かけますか」

相変わらず亮一はうやむやに答えた。
「うちは制服で来るお客さまはいらっしゃいません。夜だけのバーですから」

そうですよねと、年かさの警察官はハハッと笑う。


「お忙しいところすみませんでした」
何か気づいたことがあれば、すぐそこの交番でもかまいませんので連絡してくださいと軽く頭を下げて、ふたりの警察官は店を出ていった。


――なんだよ、今の話ヤバいじゃねぇか。
そう思ったトオルは亮一を振り返ったが、彼は早速玉ねぎのみじん切りに勤み始めている。

いま聞いた話は気になるが開店時間は待ってくれない。
あと二十分の間に賄いを食べて準備を済ませなければならないのだ。

薔薇と制服の少年――。
トントントンと軽快なリズムを聞きながら、トオルは『まさか、な』と軽く首を振り、まずは賄いを平らげることに専念した。