「さぁ、もう先に帰っていいぞ。気をつけてな」

「マスター、俺さ、本当は今日が二十歳の誕生日なんだ」

「ええ? 四月生まれじゃなかったのか?」
「うん。あれはウソ、本当は二月生まれ。それでさ、マスター宛に預かってる手紙があるんだ」

トオルはそう言うと、いつの間にバッグから取り出していたのか封筒を差し出した。

「手紙? 誰から?」

「読めばわかるよ。と言っても俺は読んでないから中味のことは知らないけど、名前は書いてあると思う」

受け取った亮一は指先の感触にハッとして封筒を裏返した。

――これは。

手紙は赤いシーリングワックスで封印してあった。
亮一の記憶にある限り、中世のヨーロッパのようなそんな封印をする人はひとりしかいない。


「まさか……」