「ありがとうございました」
カランカラン

結局亮一がトオルから話を聞くことができたのは最後の客が帰ったあと、日付が変わった深夜だった。

CLOSEの札を下げて片付けを始めながらトオルが言った。
「警察に付き添ってきた」

やはりそうかと思った。
二時間という時間と、彼女に話をしていた内容から想定はできたことだ。

「少年が犯人だったのか?」
言いながら、胸のどこかが苦しく疼いた。
できれば違っていてほしい。

「犯人になるのかなぁ? いや多分違うと思う。っていうか少年じゃなくて少年の友達のほうね」

「なんだよ、それを先に言えよ。で?」

「母親の浮気相手だと思ってちょっと脅すつもりだったらしい。母親と男が会っているのを何度か見かけたらしくて、男のあとを付けたんだそうだ」

トオルの話によれば、少年の友人は路地裏で男に声をかけて母親とは二度と会うなと刃物を見せたらしいということだった。

「揉み合ったのか?」
「いや、それがその男が、『そんなものを持っちゃいけない、ヒロシ』って、名前を呼んだんだって。気が動転して、それからのことはよく覚えてないらしい。気がついた時には男が倒れて、『行け、ヒロシ。早くここを離れるんだ』そう言ったんだって」

「どういうことだ?」