訝しげに思いながらも、盛り付けている料理を少し変えることにした。
チキンとペンネのアラビアータの量を増やし、その分タコの入ったカルパッチョの量を減らす。

「おまたせしました」
安心したところで食欲も出てきたに違いない。
酒肴にしてはしっかりとした量が盛られているプレートを見て、彼女はうれしそうに破顔した。

「男性が言ったそうですよ。綺麗な女性が通りかかったので、薔薇の花束をあげたのだと。お客さまだったのですね」

今夜のトオルは随分、口が軽い。
綺麗な女性と言われれば少なからずうれしいだろう。店内の照明はそう明るくはないので頬を染めたかどうかはわからないが、彼女は恥ずかしそうに睫毛を揺らして俯いた。

とりあえずは彼女の薔薇の謎が解けた。

残るは一つ。
トオルが出前に二時間かけた理由。少年のほうに何かあったということか。