その頃、トオルは少年のマンションに入り彼の部屋の前で扉が開くのを待っていた。
そしてカチャっと開いたドアに手を掛けると「失礼しまーす」と言って、少年を押しのけるようにして玄関に中に入った。

「ちょ、な、なんだよ!」
慌てた少年が押し返そうと抵抗するが、難なくかわして廊下を進んで部屋の中に入っていく。

「待てよっ! お前、ふざけんなっ!」
「まぁまぁ、そう怒るなよ」

リビングのソファーには目を丸くして驚いている若い男がいた。
同級生か、もしくは先輩後輩か。

「勝手なことしてんじゃねーよ!」

「警察呼ぶか? 今日うちの店に来たぞ?おまわりさんが二人」
トオルがそう言うと、少年ふたりはわかりやすいほど動揺した。

「何があったんだ。とりあえず食べて、話を聞かせてくれよ、な、少年」


***


カランカラン
今度こそトオルかと思って亮一はドアベルの音に振り返った。

が、しかし入って来たのは、トオルではなく二人目の客である。
「いらっしゃいませ」

――まったくあいつは、一体なにをやっているんだ。
マンションはすぐ目の前なので、届けるだけなら2、3分もあれば十分なはずなのに、トオルが店を出てからゆうに三十分は経っている。
この時間はまだ店が混み合うこともないので、困ることはそれほどないが。それにしても遅い。