ふいに柊木さんと阿形さんが、同時に胸ポケットから携帯を取り出した。たぶん佐行さんからだろうと思って見ていると、「浮かれやがって」と阿形さんが舌打ちした。やっぱり佐行さんからみたいだ。
「佐行は今回、お前のことをだいぶ気にしてたからな」
「あいつ、そういうときだけ年上ぶるの、ムカつきますよね……」
柊木さんの言葉に、タタタと返信を打つ阿形さんの耳がふわっと染まる。色が白いからすぐにわかってしまう。
「阿形さんと佐行さんも同期かと思ってました」
「向こうがひとつ上」
へええ。そうか、阿形さんはこの中で、私をのぞいたら最年少なのか。蔵寄さんもすごく気にかけているふうだった。この口の悪い人は、どうやらみんなからかわいがられているらしい。
「浮かれてるって、なんですか?」
「虹が出てるんだってさ」
阿形さんが画面をこちらに見せる。蔵寄さんとふたりでそれをのぞきこんだ。
初夏の夕方の、まだじゅうぶんに明るい空。ビル群をのんびり見下ろしているような、大きな虹がかかっている。
ついでに自撮りらしき佐行さんが、ピースしながら見切れている。
「梅雨も終わるな」
手元の携帯を見下ろして、柊木さんが言った。
だといいですね、と阿形さんが答えた。
「佐行は今回、お前のことをだいぶ気にしてたからな」
「あいつ、そういうときだけ年上ぶるの、ムカつきますよね……」
柊木さんの言葉に、タタタと返信を打つ阿形さんの耳がふわっと染まる。色が白いからすぐにわかってしまう。
「阿形さんと佐行さんも同期かと思ってました」
「向こうがひとつ上」
へええ。そうか、阿形さんはこの中で、私をのぞいたら最年少なのか。蔵寄さんもすごく気にかけているふうだった。この口の悪い人は、どうやらみんなからかわいがられているらしい。
「浮かれてるって、なんですか?」
「虹が出てるんだってさ」
阿形さんが画面をこちらに見せる。蔵寄さんとふたりでそれをのぞきこんだ。
初夏の夕方の、まだじゅうぶんに明るい空。ビル群をのんびり見下ろしているような、大きな虹がかかっている。
ついでに自撮りらしき佐行さんが、ピースしながら見切れている。
「梅雨も終わるな」
手元の携帯を見下ろして、柊木さんが言った。
だといいですね、と阿形さんが答えた。