期待をこめたまなざしを送ってみるものの、柊木さんはとくに表情を変えず、片手をデスクに伸ばしてキーボードをカチ、と叩いた。
「間接的に、取り扱うことになるかもしれない」
「間接的?」
「今の話は、本題と絡んでくる」
そういえば本題なるものがあった。
「なんですか、本題って?」
彼のPCにつながれている、外づけのカードリーダーみたいな小さな黒い装置に、緑色のランプが点る。
柊木さんが片手でPCを操作しながら言う。
「きみはこの第二総務部のために、働く気があるか」
えっ!
「あります!」
「よし、社員証を」
「社員証?」
舞い上がる私と対照的に、柊木さんは冷静どころか、こちらを見てすらいない。差し出された手に、私は社員証をネックストラップから出してのせた。
新人のころの、学生気分丸出しの顔写真が恥ずかしい。けれど彼はそれには目もくれず、社員証をさっきの黒い装置に挿した。やっぱりカードリーダーだった。
彼がエンターキーを何度か叩くと、装置のランプが赤くなり、また緑色になる。柊木さんはリーダーから社員証を抜き取り、「はい」と私に返した。
「この部屋と、あといくつかの部屋の開錠権限を付与した」
「わ……」
両手で受け取り、私は言葉を失った。
生まれ変わった社員証は、当然ながら見た目はどこも変化していない。けれどなにか、神々しささえ帯びた宝物のように感じた。
「あっ、ありがとうございます」
「きみの立場は、いわば調査員だ。俺たちは適宜、きみに頼みごとをする。それに応じてほしい。無理はしなくていい。あくまで本業を優先で」
「いやっ、もう心は第二総務部の人間になったつもりでがんばります!」
意気ごんだ私に、柊木さんが「それじゃ本末転倒だ」と顔をしかめた。
パチパチパチ、と拍手の音が聞こえた。佐行さんだ。
「任命おめでとー。って、おめでたいかどうかわからないけど。今後よろしくね」
阿形さんも佐行さんほどの熱はないものの、手を叩いている。
私は感激し、深々と頭を下げた。
「よろしくお願いします」
「岳人さんの後輩だね。六階はこれで死角なしだな」
はっとした。蔵寄さんの話が途中だったのを思い出したのだ。
「あの、蔵寄さんって……」
「あの人もあんたと同じ立場だよ。俺たちだけじゃ手に入らない情報なんかを集めてくれる」
「なんと……!」
「間接的に、取り扱うことになるかもしれない」
「間接的?」
「今の話は、本題と絡んでくる」
そういえば本題なるものがあった。
「なんですか、本題って?」
彼のPCにつながれている、外づけのカードリーダーみたいな小さな黒い装置に、緑色のランプが点る。
柊木さんが片手でPCを操作しながら言う。
「きみはこの第二総務部のために、働く気があるか」
えっ!
「あります!」
「よし、社員証を」
「社員証?」
舞い上がる私と対照的に、柊木さんは冷静どころか、こちらを見てすらいない。差し出された手に、私は社員証をネックストラップから出してのせた。
新人のころの、学生気分丸出しの顔写真が恥ずかしい。けれど彼はそれには目もくれず、社員証をさっきの黒い装置に挿した。やっぱりカードリーダーだった。
彼がエンターキーを何度か叩くと、装置のランプが赤くなり、また緑色になる。柊木さんはリーダーから社員証を抜き取り、「はい」と私に返した。
「この部屋と、あといくつかの部屋の開錠権限を付与した」
「わ……」
両手で受け取り、私は言葉を失った。
生まれ変わった社員証は、当然ながら見た目はどこも変化していない。けれどなにか、神々しささえ帯びた宝物のように感じた。
「あっ、ありがとうございます」
「きみの立場は、いわば調査員だ。俺たちは適宜、きみに頼みごとをする。それに応じてほしい。無理はしなくていい。あくまで本業を優先で」
「いやっ、もう心は第二総務部の人間になったつもりでがんばります!」
意気ごんだ私に、柊木さんが「それじゃ本末転倒だ」と顔をしかめた。
パチパチパチ、と拍手の音が聞こえた。佐行さんだ。
「任命おめでとー。って、おめでたいかどうかわからないけど。今後よろしくね」
阿形さんも佐行さんほどの熱はないものの、手を叩いている。
私は感激し、深々と頭を下げた。
「よろしくお願いします」
「岳人さんの後輩だね。六階はこれで死角なしだな」
はっとした。蔵寄さんの話が途中だったのを思い出したのだ。
「あの、蔵寄さんって……」
「あの人もあんたと同じ立場だよ。俺たちだけじゃ手に入らない情報なんかを集めてくれる」
「なんと……!」