中央に、私が使っているのと同じ業務机がふたつずつ向かいあわせに置いてある。奥に、その四つの机を見守るような向きで、管理職用の大きめのデスクがひとつある。そこは無人で、使われているようにも、いないようにも見えた。
四つの机のうちのひとつに、佐行さんがいた。ほかの机は空席だ。
一般的に考えたら、管理職机をのぞけば入口からもっとも遠い、右奥の席が上座だろう。椅子の背中にスーツの上着がかけられている。もしかしてあれは、柊木さんの席なんじゃないだろうか。
佐行さんが座っているのは、その正面の席だ。二番手ということだろうか。
彼が椅子ごとぐるんとこちらを向き、歓迎するように両手を広げた。
「いらっしゃーい、生駒ちゃん」
「柊木さんは?」
尋ねたのは阿形さんだ。佐行さんの隣が彼の席らしい。閉じてあったノートPCを開くと、パチパチっとパスを打ちこんで画面を起ち上げる。
「情報収集してくるって言って出てったよ」
「ほんとだ」
なにが『ほんとだ』なんだろう。私はとくに立ち入りを咎められなかったので、阿形さんのそばへ行き、画面をのぞいた。思わず「うわっ!」と驚きの声が出る。
画面には、粗い映像が映し出されていた。行きかう人の動きもちょっと飛び飛びでぎこちない。これはあれだ。防犯カメラの映像だ。
それだけならこんなに驚かない。私がびっくりしたのは、映っているのがどう見ても、この会社の廊下だったからだ。
「これ、今現在の映像ですか? ……ですね」
質問してから、左上に日付と時刻が表示されていることに気づいた。それが正しいのだとしたら、この映像はまさに今、リアルタイムのものを見ていることになる。
画面の右端のドアから人が出てきて、廊下を横切っていった。マケプロの人だ。おそらくここは、六階の廊下だ。
そして奥のほうで立ち話をしているふたりの男性がいる。一方は柊木さんだった。彼は軽く手をあげ相手に別れを告げると、エレベーターに乗った。
阿形さんが立ったまま、パチッとキーボードを操作する。ぱっと画面が分割された。十六分割……よりは数がある。それぞれが別の映像で、画質に少し差がある。設置してあるカメラの性能が違うんだろう。
何分割かな、と縦横の数を数えているうちに、またパチッとキーが打たれ、ひとつの映像が大きく映し出された。エレベーターの中の柊木さんだ。
四つの机のうちのひとつに、佐行さんがいた。ほかの机は空席だ。
一般的に考えたら、管理職机をのぞけば入口からもっとも遠い、右奥の席が上座だろう。椅子の背中にスーツの上着がかけられている。もしかしてあれは、柊木さんの席なんじゃないだろうか。
佐行さんが座っているのは、その正面の席だ。二番手ということだろうか。
彼が椅子ごとぐるんとこちらを向き、歓迎するように両手を広げた。
「いらっしゃーい、生駒ちゃん」
「柊木さんは?」
尋ねたのは阿形さんだ。佐行さんの隣が彼の席らしい。閉じてあったノートPCを開くと、パチパチっとパスを打ちこんで画面を起ち上げる。
「情報収集してくるって言って出てったよ」
「ほんとだ」
なにが『ほんとだ』なんだろう。私はとくに立ち入りを咎められなかったので、阿形さんのそばへ行き、画面をのぞいた。思わず「うわっ!」と驚きの声が出る。
画面には、粗い映像が映し出されていた。行きかう人の動きもちょっと飛び飛びでぎこちない。これはあれだ。防犯カメラの映像だ。
それだけならこんなに驚かない。私がびっくりしたのは、映っているのがどう見ても、この会社の廊下だったからだ。
「これ、今現在の映像ですか? ……ですね」
質問してから、左上に日付と時刻が表示されていることに気づいた。それが正しいのだとしたら、この映像はまさに今、リアルタイムのものを見ていることになる。
画面の右端のドアから人が出てきて、廊下を横切っていった。マケプロの人だ。おそらくここは、六階の廊下だ。
そして奥のほうで立ち話をしているふたりの男性がいる。一方は柊木さんだった。彼は軽く手をあげ相手に別れを告げると、エレベーターに乗った。
阿形さんが立ったまま、パチッとキーボードを操作する。ぱっと画面が分割された。十六分割……よりは数がある。それぞれが別の映像で、画質に少し差がある。設置してあるカメラの性能が違うんだろう。
何分割かな、と縦横の数を数えているうちに、またパチッとキーが打たれ、ひとつの映像が大きく映し出された。エレベーターの中の柊木さんだ。