「すみません、やりすぎたかと思ってだまってたんですが、じつはカクワフーズに連絡を取りまして、発注関連書類の写しをファックスで送ってもらいました」
「連絡を取ったって……、どうやって?」
「請求書に書いてある連絡先に電話をして。これなら出入りの営業さんじゃなくて、うちとは面識のない経理関係の人につながりますよね。こちらは名乗らず、〝担当者です〟とだけ伝えました。これが送られてきたものです」
 私はもうひとつ持っていたクリアファイルを差し出した。柊木さんが、私の顔を見つめながらゆっくりと受け取る。
「どうしてそこまで?」
「最初にお見せした写しは、おわかりのとおり、会計伝票に添付されていたものです。経理課で見つけましたが、カクワフーズに渡っている発注書が、これと同じものとはかぎらないって気がついたんです。その気になれば偽造できるし。やるなら完璧を目指したいと思って……」
 佐行さんが「やるねー」と小さく手を叩いた。
「結局、同じ内容でしたけど。でも、カクワフーズが送ってくれた文書の中には、納品書の明細がついていました」
 言うのと同時に、柊木さんの器用そうな指が、ファイルからその明細の写しを取り出していた。A4サイズの用紙に、表が印刷されている。
 ふたつある項目には、どちらも『食事提供費』とあり、それぞれ別の日付が書かれていた。一方は四月二十八日。一方は四月十二日だ。金額もそれぞれ違い、合計すると納品書にあった金額と同じになる。
 明細を凝視していた柊木さんの顔色が変わった。横からのぞきこんでいた佐行さんも、はっと表情を引き締める。
「佐行、この日付」
「これは……日曜ですね。ちょっと待ってください。こういうのは阿形が詳しい」
 佐行さんは壁際のラックのほうへ行くと、黄ばみを通り越して茶色くなっている固定電話の受話器を取り上げた。見た目からして、もう使われていないのかと思っていたら、現役だったのか。
「阿形? 俺。ちょっと教えてほしいんだけどさ、うん」
 やりとりをよそに、柊木さんはまだ明細書をにらんでいる。
「あの……、私、これを見ても重要性がわからなかったんですが……」
「おそらくだが」
 彼は明細書に視線をやったまま口を開いた。
「食堂の費用として支払われているのは、最終営業日に納品された金額だけだ」
「じゃあこの、半端な日付のほうは……」