「生駒さん、請求書が一件、明日の夕方着になっちゃうんだけど、いいかな」
「はーい。金額はどのくらいですか?」
 翌日も宣伝課は、支払い処理でてんてこまいだ。先輩のひとりが、「ちょっと待ってね」とデスクをあさり、見積書を私のところへもってきた。
「これ。七十五万円」
「この額なら当月払いになっても大丈夫なので、明日の締め時刻に間に合わなかったら、当月処理とします。間に合えば翌月払いで処理してください」
「了解、ありがとう!」
 各人がシステム入力を終えた伝票は、出力して請求書や発注書とともにホチキスで綴じ、一時的に書類棚に集める。私はその棚に入れられたものをチェックし、担当社印と承認印が両方あるか、処理が間違っていないか、請求書、発注書、納品書といった証憑がすべて添付されているかを確認し、出納課に持っていく。
 このときすべての書類のコピーを取って部署で保管しなければならないのだけれど、これだけで毎月厚さ十センチのファイルがぱんぱんになる。
 ひとつひとつチェックしながら、はたと気づいた。
 発注書と納品書の添付。
 人事部の伝票に、それらの写しもくっついているはずだ。提出した伝票は一定期間、出納課のキャビネットにストックされる。
 以前、提出後にコピーミスに気づき、原本をさがしに行ったことがあるからわかる。ひと声かければ、ストックは自由に見ることができる。
 カクワフーズ宛ての支払伝票を、その中から見つけることができたら……。

「お世話さまです。よろしくお願いします」
 お昼少し前、私は伝票を提出しに出納課を訪れた。キャビネットの上に伝票の提出ボックスがあり、すでにどっさり入っている。
 持ってきた伝票をそこに入れ、私はキャビネット越しに出納課の女性に声をかけた。彼女らのデスクは窓口のように、こちら側を向いて並んでいる。
「すみません、先日提出したぶんをさがしたいんですが」
「一番下のキャビネに入ってますよ」
 よし!
 お礼を言い、キャビネットの下段を開けた。ずっしり重い引き出しには、コピー用紙の空き箱がいくつか入っており、その中にホチキス留めされた伝票がわんさか入っている。
 ざっと見たところ、広告宣伝費や消耗品費、新聞図書費などが混ざっている。科目ごとに仕分けされてはいない様子だ。