長い連休が明けた。
会社のデスクの上には、配られたお土産のお菓子がいっぱいだ。海外のものもあって、見ているだけで楽しい。足の早そうなものから順に食べよう。
「朝礼はじめるよー」
チャイムが鳴り終わるのを待って、課長がデスクの島の間にみんなを集めた。
ウェブデザインの会社に就職した友だちに話したら、『今どきそんなことやってる会社があるなんて』と驚かれた、ザ・朝礼だ。
手帳を手に集まった宣伝課の面々が、順に今日の予定を簡単に報告していく。
「私は打ちあわせ三件。ほかは席にいる予定です。帝テレの担当者さんが代わったのでご挨拶にいらっしゃいます。課長も同席お願いします」
「うん、スケジュールに入ってる」
「カタログ撮影で、このあとすぐ出ます。明日もいません」
「踏ん張りどころだね、がんばってね」
先輩たちの報告する内容は、いかにも宣伝マンという感じで憧れる。
私が担当しているSPツール制作というのは、新人が配置されるポジションなのだ。広告物件の制作の基本を知るのにちょうどよく、またさまざまな部署の人とやりとりしなければいけないため、結果的に社内に顔を売ることができる。
私の番が回ってきた。
「打ちあわせ二件、あとは先月分の伝票処理をします。明後日が支払伝票の締め日ですので、みなさんも漏れのないよう会計システムの入力をお願いします」
うわー、とかそうだった、とか悲鳴があがる。私は課の会計も担当しているのだ。
毎月訪れる、月初の憂鬱な伝票処理。宣伝課は扱う額も案件数も相当なのに、庶務や経理を担う派遣さんがいないため、基本的に各自が経理処理をしなければならない。その作業量は膨大だ。
みんなの処理に間違いがないか、処理漏れがないか、証憑がそろっているかなどをチェックし、全員分の伝票を経理課に提出するまでが私の仕事。
そういった雑務から解放されている課長が、にっこり笑った。
「みんな、生駒さんに迷惑かけないよう、がんばろうね。じゃあ今日も楽しく仕事しましょう。解散!」
長い長い休み明けの、なんとなく社内が目覚めきっていないような空気が漂う午前中。フロアのドアが開き、蔵寄さんが入ってきた。
外出先から直行してきたらしく、鞄とスーツの上着を片手に持っている。まっすぐ宣伝課へやってくると、課長の席に行き、気さくに挨拶した。