的外れな推理をしたんだとばかり思って、けっこうへこんだのに……。詮索を禁じられて、かゆいのにかけないようなもどかしさを、ずっと抱えてたのに!
 悔しさに頭を抱え、歯ぎしりしたい思いを飲みこんだ。
 にやにやしているみんなの顔が腹立たしい。まさかの蔵寄さんまで参加している。
 なんだよ、もう。
 なんだよー!!

 最高気温の予報に、体温みたいな数字が並ぶようになってきた。
 宣伝課は、テレビ局や新聞社、雑誌社を招いての新型ハイペリオン試乗会および発表会の準備が盛り上がってきている。とくに試乗会はもう目の前に迫った。
「普通は全員でコースまで移動するんだけど、今回はそれだと暑くて倒れちゃうから、少人数ごとにピストン輸送します」
「宣伝課と広報部の車をありったけ持ってくから、それを使うイメージ。メディアさんを乗せるので、運転は代理店さんでなく、うちの社員で。生駒さんも担当してもらっていいかな?」
 試乗会の運営の中心となるのは、もっとも大きな予算を握るテレビ・新聞の担当である間瀬さんと、もちろんハイペリオンの車種担当、浅田さんだ。
 おつきあいのあるメディアさんを招いて新型にたっぷり乗せ、レビュー記事を書いてもらうのが目的の会なので、メディアチームは総出でアテンドを務める。
 試乗会場はオーソドックスに、富士山のふもとにあるサーキットだ。
「はいっ、もちろんです」
 私は運営のお手伝いとしての参加だ。なんでもやります、と敬礼した。浅田さんが心配そうに顔をくもらせる。
「大丈夫? サーキット内で道に迷ったら助けてあげられないよ」
「信号とか交差点がなければ大丈夫です!」
 私は車を運転しているときだけ方向音痴になるという特性の持ち主だ。おそらく道路地図を、運転席からのビューにうまく変換できないんだと思う。曲がろうと思っていた交差点が、ここなのかひとつ先なのかわからない、みたいな感じだ。カーナビがあれば目的地には到達できるけれど、カーナビと意見がぶつかることが多いため、とても疲れる。
 そろそろ自分の車を買って、たくさん乗ろうかなと計画中だ。
「ものすごい暑さが予想されるので、僕ら自身も暑さ対策と体調管理、しっかりしていきましょう。またアップデートがあったらご報告します」
 間瀬さんの言葉で解散となった。