【第二総務部、お仕事です! 内線六四〇七】
 三回目ともなると、書くのも慣れてくる。
 推理がまとまった翌朝、もはや時間帯の選択肢もそんなにないため、再び通勤ラッシュ前を狙って地下二階の伝言板へ行った。
 これが最後かもしれない。もし推理がはずれたら、私は二度と第二総務部を呼び出そうとは思わないだろう。応じてくれなかったら傷つくからだ。
 伝言板に向かって手を合わせ、拝んだ。どうか、報われますように。

 その日は内線が鳴るたび、飛び上がりそうになりながら午前中を過ごした。
 大型連休の直前、社内はなんとなく浮ついている。大きな工場を持つメーカーの例にもれず、この会社も飛び石をすべてつぶし、GWは毎年十日前後の連休になる。
 去年は新人だったから、まだ研修の最中で、せっかくおぼえたことが連休中に頭から流れ出ていってしまうんじゃないかと、長すぎる休みに怯えた。
 今年は純粋に休みを満喫したい。そのためにも……。
 昼休みのチャイムが鳴った。
 フロアの電気が消え、みんなめいめい席を立ち、食堂もしくは外で食事をするために出ていく。私もノートPCを閉じ、財布を出そうとバッグに手を伸ばした。
 そのとき、私の席の電話機のランプが点った。
 一瞬遅れてコール音が鳴りはじめる。暗くなったフロアで、赤いランプが力強く点滅している。音がやけに大きく聞こえ、フロアじゅうに響き渡っている気がする。
 席に残っている宣伝課員は、私ひとりだ。震える手で受話器を持ち上げた。
「……宣伝課、生駒です」
『第二総務部です。メッセージをありがとうございました』
 この間と同じ声がした。
 私は両手で受話器を握り、努めて冷静な声を出すようにした。
「お電話ありがとうございます」
『回答のご用意ができたということで、いいでしょうか』
「はい」
 推理に使った手帳を取り出そうと思ったけれど、やめた。もう全部頭の中に入っている。会話に集中しよう。
「……あなたは、このビルに常駐しているだれか、ですね」
『二十の扉をして遊ぶつもりはありません。回答は一気にお願いします』
 私は「すみません」と慌てた。そんなつもりじゃなかったのだけれど、無意識に色気が出たのかもしれない。いけない、いけない。
 気を取り直し、深呼吸をする。
「失礼しました。あらためて、私の推理をお伝えします」
『お聞きしましょう』