ぽんと肩を叩かれ、無言でうなだれる柊木さんが、びっくりするほど人間くさく見えたので、私はまた聞きそびれてしまったのだった。
真栄さんと、どんな関係なんですか、と。
翌週の月曜日。
澤口さんが試合中に負傷し、病院に運ばれた。
午後からアマナ硬式野球部の第二回戦が行われていた。午後休をとって応援に行くことが推奨され、喜んでそうする社員が大半だった。
私も一回戦と同じように、部署の先輩たちと応援に行っていた。試合が始まってすぐ、打球が澤口さんの肩を直撃し、彼は倒れた。
「生駒ちゃん、こっち」
都内の病院の前でタクシーを降りる。連絡をくれた佐行さんが、エントランスの前で待っていてくれた。
「大丈夫なんですか、澤口さん……」
「うん、一応はね」
都心にある、有名な病院だ。佐行さんのあとをついて、エントランスの横手の時間外入り口から入った。短い廊下の先に吹き抜けのロビーが見え、その豪華さに驚いた。ゆったりしたひとり掛けのソファにグランドピアノ。まるでホテルだ。
一般診療の時間は終わっているため、ひっそりと静まり返っている。
「こっちだよ、妙な人がいたら教えてね。入れないようにはしてあるけど」
「はいっ」
最初に運ばれた病院からここに移され、手術が行われたらしい。私たちは特別病棟と書いてある建物へ向かった。
途中二回、入り口でもらったIDを見せる窓口があった。厳重だ。
エレベーターで四階に上がる。そこは床もドアも木製で、壁は羽目板張りという、およそ病院らしからぬ雰囲気の廊下だった。少し進んで右に折れると、大きな木のスライドドアがあり、その前に柊木さんが立っていた。
「お疲れさまです」
私の挨拶に、うなずきで応じる。携帯を手にしていた彼は、佐行さんに顔を向けた。
「今上がってくるそうだ」
「じゃあちょっと澤口くんの様子、見てきます」
佐行さんがスライドドアをそっと開け、中に消えた。ほぼ同時に、私たちがやってきた方向から足音が聞こえてきた。
気ぜわしげな足音の主は、すぐに廊下の角から現れた。茶色の髪を胸のあたりまで垂らした、きれいな女性。真栄さんだ。
遅れて阿形さんが姿を見せる。彼が迎えに行っていたんだろう。
真栄さんと、どんな関係なんですか、と。
翌週の月曜日。
澤口さんが試合中に負傷し、病院に運ばれた。
午後からアマナ硬式野球部の第二回戦が行われていた。午後休をとって応援に行くことが推奨され、喜んでそうする社員が大半だった。
私も一回戦と同じように、部署の先輩たちと応援に行っていた。試合が始まってすぐ、打球が澤口さんの肩を直撃し、彼は倒れた。
「生駒ちゃん、こっち」
都内の病院の前でタクシーを降りる。連絡をくれた佐行さんが、エントランスの前で待っていてくれた。
「大丈夫なんですか、澤口さん……」
「うん、一応はね」
都心にある、有名な病院だ。佐行さんのあとをついて、エントランスの横手の時間外入り口から入った。短い廊下の先に吹き抜けのロビーが見え、その豪華さに驚いた。ゆったりしたひとり掛けのソファにグランドピアノ。まるでホテルだ。
一般診療の時間は終わっているため、ひっそりと静まり返っている。
「こっちだよ、妙な人がいたら教えてね。入れないようにはしてあるけど」
「はいっ」
最初に運ばれた病院からここに移され、手術が行われたらしい。私たちは特別病棟と書いてある建物へ向かった。
途中二回、入り口でもらったIDを見せる窓口があった。厳重だ。
エレベーターで四階に上がる。そこは床もドアも木製で、壁は羽目板張りという、およそ病院らしからぬ雰囲気の廊下だった。少し進んで右に折れると、大きな木のスライドドアがあり、その前に柊木さんが立っていた。
「お疲れさまです」
私の挨拶に、うなずきで応じる。携帯を手にしていた彼は、佐行さんに顔を向けた。
「今上がってくるそうだ」
「じゃあちょっと澤口くんの様子、見てきます」
佐行さんがスライドドアをそっと開け、中に消えた。ほぼ同時に、私たちがやってきた方向から足音が聞こえてきた。
気ぜわしげな足音の主は、すぐに廊下の角から現れた。茶色の髪を胸のあたりまで垂らした、きれいな女性。真栄さんだ。
遅れて阿形さんが姿を見せる。彼が迎えに行っていたんだろう。