「お前、まさか俺に隠れて、佳乃と連絡を取ってたりしないよな?」
「連絡を取ることが問題なんですか?」
油のついた指をなめながら、柊木さんが平然とはぐらかした。社長を煽っているのは一目瞭然で、こっちの肝が冷えた。
柊木さんが、聞き分けの悪い相手にするように、ことさら丁寧に言う。
「それとも、〝あなたに隠れて〟が問題なんでしょうか」
社長のこめかみの下あたりが、ぴくりと動いた。奥歯を噛みしめたに違いない。
彼の射るような目つきが、私に向けられた。私は、ひっと緊張したものの、すぐにその視線の意味が理解できた。社長はピザをご所望なのだ。
急いで新しい紙皿にピザとポテトを盛って、ヤクモさんと思われる男性に渡す。彼は一礼して受け取った。
ふたりは無言で出ていった。
はぁーっと深い息が漏れた。すごい圧だった……。
なぜ社長がここに……という疑問に答えてくれそうな人をさがしたけれど、雰囲気的にいなそうだ。というより私以外、そこを疑問視していないように見える。
ため息まじりに佐行が口を開いた。
「真栄ちゃんと連絡取ってるんですか?」
柊木さんは「連絡先も知らない」と首を振る。
「おちょくっただけですか」
「そのくらい、いいだろう。人の職場に踏みこんできて、偉そうに」
腕組みをして不機嫌さをまき散らしている様子に、「反抗期……」と佐行さんがつぶやく。まさしくそんな感じだなと思いはするものの、とても口には出せない。
柊木さんがラックから離れ、テーブルのほうへやってきた。ペットボトルのウーロン茶を紙コップにそそぎ、ぐいっと飲み干す。
「追うぞ、この件」
「えっ」
私はびっくりして、思わず尋ねた。
「真栄さんを見つけ出すんですか?」
「それは澤口選手に任せておけばいい。俺たちは根元を叩く」
「根元?」
首をひねる私に、佐行さんが助け舟を出してくれる。
「澤口くんの話の中で、なんか違和感のある箇所、なかった?」
「違和感……?」
思い出してみても、これというものが浮かばない。首を振って、ギブアップであることを伝えると、柊木さんが私の顔を見据えた。
「澤口選手の免許取消の経歴を見つけ、タイミングを見計らったように社長に知らせた人間がいる」
「あっ!」
「まずはそいつがだれかを突き止める」
佐行さんが楽しそうに、「イエッサ!」と敬礼した。
「連絡を取ることが問題なんですか?」
油のついた指をなめながら、柊木さんが平然とはぐらかした。社長を煽っているのは一目瞭然で、こっちの肝が冷えた。
柊木さんが、聞き分けの悪い相手にするように、ことさら丁寧に言う。
「それとも、〝あなたに隠れて〟が問題なんでしょうか」
社長のこめかみの下あたりが、ぴくりと動いた。奥歯を噛みしめたに違いない。
彼の射るような目つきが、私に向けられた。私は、ひっと緊張したものの、すぐにその視線の意味が理解できた。社長はピザをご所望なのだ。
急いで新しい紙皿にピザとポテトを盛って、ヤクモさんと思われる男性に渡す。彼は一礼して受け取った。
ふたりは無言で出ていった。
はぁーっと深い息が漏れた。すごい圧だった……。
なぜ社長がここに……という疑問に答えてくれそうな人をさがしたけれど、雰囲気的にいなそうだ。というより私以外、そこを疑問視していないように見える。
ため息まじりに佐行が口を開いた。
「真栄ちゃんと連絡取ってるんですか?」
柊木さんは「連絡先も知らない」と首を振る。
「おちょくっただけですか」
「そのくらい、いいだろう。人の職場に踏みこんできて、偉そうに」
腕組みをして不機嫌さをまき散らしている様子に、「反抗期……」と佐行さんがつぶやく。まさしくそんな感じだなと思いはするものの、とても口には出せない。
柊木さんがラックから離れ、テーブルのほうへやってきた。ペットボトルのウーロン茶を紙コップにそそぎ、ぐいっと飲み干す。
「追うぞ、この件」
「えっ」
私はびっくりして、思わず尋ねた。
「真栄さんを見つけ出すんですか?」
「それは澤口選手に任せておけばいい。俺たちは根元を叩く」
「根元?」
首をひねる私に、佐行さんが助け舟を出してくれる。
「澤口くんの話の中で、なんか違和感のある箇所、なかった?」
「違和感……?」
思い出してみても、これというものが浮かばない。首を振って、ギブアップであることを伝えると、柊木さんが私の顔を見据えた。
「澤口選手の免許取消の経歴を見つけ、タイミングを見計らったように社長に知らせた人間がいる」
「あっ!」
「まずはそいつがだれかを突き止める」
佐行さんが楽しそうに、「イエッサ!」と敬礼した。