「好きそう。正統派美人に隙を足したみたいなタイプ」
 私も過去の社内報やネットをあさって、真栄佳乃さんの写真を見た。すばらしい美貌の持ち主なのはもちろんのこと、ちょっとおっとりした性格が写真にも表れていて、かわいらしいのだ。
「澤口くんとお似合いだよ。野球も恋も応援してあげたくなるねー」
「彼女が事件に巻きこまれてたりしたら別だけど、そういうニオイもしないし。彼女を見つけたら俺らの仕事は終わりかな」
「あの、気になってたんですけど」
 今のうちにと思い、私はふたりに聞いた。
「うん?」
「柊木さんて、真栄さんとお知りあいかなにかですか?」
 ふたりがふっと真顔になる。思ったとおりだ。
 佐行さんがにやっとした。
「どうしてそう思った?」
「最初に澤口さんの口から真栄さんのお名前が出たとき、柊木さんがちょっと反応したので。しかもそれを隠したので、あの場では言いたくないような、個人的な関係があるのかなと」
 阿形さんが「マジか」と異物を見るような目つきを向けてくる。
「事情を知ってる俺が見てても、柊木さんはうまく隠してたと思うのに。なにその異常な観察眼、怖っ」
「さすが生駒ちゃんだよねー、そういうとこ」
「どんなご関係なんですか?」
 うーん、と佐行さんが宙を見つめ、ちらっと私に視線をやった。
「はたから見てても、仲がよかったよ。柊木さんが慕われてたっていうか」
「へえ……」
 そうなんですか、と言った声は、小さすぎたかもしれない。

 澤口さんの部屋は、コンパクトなダブルルームだった。ロビーの豪奢さと違い、客室内はモダンでシックだ。
 着替えと差し入れを渡すと、彼はこっちが申し訳なくなるくらい恐縮した。
「すみません。現地調達するつもりで、なにも用意してこなかったんです。まさかこっちでも見張られてると思わなくて」
「はいこれ、真栄さんがいそうな場所の候補。いてもおかしくないって言ったほうが正確かな」
 佐行さんからリストを渡され、澤口さんはきょとんとする。
「どうやって洗い出したんですか?」
「本人やお友だちのSNSを見たりして。人が身を隠そうっていうとき、いきなり見知らぬ土地に行くって考えづらいんだよね。たいてい、一度行ったことがある場所にいることが多い」