6
黙っていたままなら、私も拓登のかっこよさと、一緒にいたら鼻が高いという優越感に魅せられたことが好きになった一番の理由だと思われてしまう。
でも実際、なぜこんなにも拓登が気になってしまうのか。
考えたら理由なんて分からなくなってしまった。
「どうしたんだい? やっぱり結局は顔なんだろ」
「違う! ただ一緒にいたらドキドキするし、話しやすいし、どこか親しみがあったから、それで……」
「なんか、真由らしくなく焦ってる感じがするぜ。真由もやっぱり普通の女の子だったんだ」
瑛太は鼻で笑っていた。
それがとてもカチンときてしまった。
「そうよ、普通の女の子で何が悪いの。好きになることに一々理由なんていらないわよ」
「今度は開き直りか? それとも逆切れ? とりあえず落ち着いたらどうだ。とにかく、真由は拓登が好きって認めたな」
「あっ」
瑛太にやられてしまった。
「でもさ、俺もまだまだ諦めないぜ。ドキドキして、話しやすくて、親しみがあることが好きになる条件なら、一応俺もクリアーしてるしな」
「どういう意味よ」
「だから、真由が俺を好きになるってことに決まってるじゃないか」
「ちょっと待って、まだしつこくそういうこと言うの? 私は瑛太にドキドキなんてしないし、ただ話をしているだけだし、親しみなんて感じてない」
「おいおい、真由は拓登に俺みたいに素で自分の思ったことぶつけられるのか? それって話しやすいってことだろ。それに昔から知ってるわけなんだから親しみももちろん含まれている」
「こじ付けもいいとこね。でもドキドキはしてないわよ」
瑛太は笑っていた。
「じゃあ、ドキドキさせてやる」
瑛太は突然私に抱きついて力強く抱きしめた。
「ちょっと、何すんのよ。こんなところでやめてよ」
体の大きな瑛太に腕まで含んでがっしりと抱擁されると動くことができない。
瑛太は自分の顔を私の耳元に近づけ「真由、好きだぜ」と甘く囁いた。
軽く瑛太の息が耳にかかって、ゾクゾクとして不覚にも感じてしまう。
じぶんでも耳付近が弱かったとは知らなかった。
「いい加減にしてよ、瑛太! 早く離してよ」
「どうだ、俺でもドキドキするだろ」
瑛太が離れた時、私の顔は真っ赤になっていたと思う。
かぁっとした熱いものが体から上昇して熱を帯びていた。
でもこれは、ドキドキしたからではなくて、腹が立って怒ってるからである。
「瑛太! この間のキスといい、今回のこれといい、私許せない。ドキドキどころか、ムカムカよ」
私は思わずグーの手がてでしまい、瑛太の胸めがけて振上げた。
瑛太は笑いながら余裕でその私の手をいとも簡単に掴んでしまった。
「暴力はよくないぜ」
「これ以上、私に付き纏うのはやめてよ。瑛太のやってることは逆効果なのがわかんないの? こんなの馬鹿にされてるとしか思えない」
瑛太の顔から笑みが消えた。
それは悲しんでいるようにも見えたし、上手く行かないことにがっかりしているようにも見えた。
瑛太の手の力が緩んだので、私は振り払って、そして踵を返して一人で歩いていった。
ここは無視をするのが一番。
相手にすればそれは瑛太の思う壺となり、どんどんと瑛太は私の想像を超えてとんでもない事をしでかす。
このままではファーストキスまで奪われてしまうのではと思うと危機感を感じてしまった。
それだけは絶対に嫌!
怒りを体に溜め込んでいたので、地面に足跡がつくくらいにかなり力が入って闊歩していた。
「真由!」
後で瑛太が呼んでるがもちろん無視。
「俺、完全に嫌われてしまったみたいだな。修復不可能か?」
何を暢気にそんな事を私に聞く。
『もちろんそうよ!』と返してやりたいが、その代わりに振り向いて思いっきりあっかんベーをしてやった。
「これ以上、真由が俺になびかないのだったらさ、俺、とことん真由と拓登の邪魔してやる」
強気で睨んでいた私の顔が、一瞬で驚きの顔になり、瑛太の豹変に言葉を失った。
「だって、俺だけこんな辛い思いするなんて癪じゃないか」
瑛太は意地悪く、片方の口元だけ上げた笑みを私に見せた。
私に宣戦布告するかのごとく、いかにもそれは邪悪に次のステージへとレベルアップしたと見せ付けているようだった。
自分が報われないからといって、その仕返しを私に向ける瑛太の気持ちが信じられない。
動揺している私とは正反対に、瑛太は余裕を見せつけ堂々と私を見ていた。
その様子はいかにも本気だと言わんばかりだった。
その対決に瑛太は満足したのか、静かに踵を返し、私に背中を見せて元来た道を歩いていった。
私は呆然として暫く瑛太の背中を突っ立って見ていた。
瑛太とはどんどんこじれていき、何をしても裏目に出てしまうことが悔しかった。
瑛太は一体何をするつもりなのだろうか。
なんだか急に身震いがしてきて、怖くなってくる。
私はスマホを取り出して、そして拓登に助けを求めるように拓登のメールアドレスを探した。
黙っていたままなら、私も拓登のかっこよさと、一緒にいたら鼻が高いという優越感に魅せられたことが好きになった一番の理由だと思われてしまう。
でも実際、なぜこんなにも拓登が気になってしまうのか。
考えたら理由なんて分からなくなってしまった。
「どうしたんだい? やっぱり結局は顔なんだろ」
「違う! ただ一緒にいたらドキドキするし、話しやすいし、どこか親しみがあったから、それで……」
「なんか、真由らしくなく焦ってる感じがするぜ。真由もやっぱり普通の女の子だったんだ」
瑛太は鼻で笑っていた。
それがとてもカチンときてしまった。
「そうよ、普通の女の子で何が悪いの。好きになることに一々理由なんていらないわよ」
「今度は開き直りか? それとも逆切れ? とりあえず落ち着いたらどうだ。とにかく、真由は拓登が好きって認めたな」
「あっ」
瑛太にやられてしまった。
「でもさ、俺もまだまだ諦めないぜ。ドキドキして、話しやすくて、親しみがあることが好きになる条件なら、一応俺もクリアーしてるしな」
「どういう意味よ」
「だから、真由が俺を好きになるってことに決まってるじゃないか」
「ちょっと待って、まだしつこくそういうこと言うの? 私は瑛太にドキドキなんてしないし、ただ話をしているだけだし、親しみなんて感じてない」
「おいおい、真由は拓登に俺みたいに素で自分の思ったことぶつけられるのか? それって話しやすいってことだろ。それに昔から知ってるわけなんだから親しみももちろん含まれている」
「こじ付けもいいとこね。でもドキドキはしてないわよ」
瑛太は笑っていた。
「じゃあ、ドキドキさせてやる」
瑛太は突然私に抱きついて力強く抱きしめた。
「ちょっと、何すんのよ。こんなところでやめてよ」
体の大きな瑛太に腕まで含んでがっしりと抱擁されると動くことができない。
瑛太は自分の顔を私の耳元に近づけ「真由、好きだぜ」と甘く囁いた。
軽く瑛太の息が耳にかかって、ゾクゾクとして不覚にも感じてしまう。
じぶんでも耳付近が弱かったとは知らなかった。
「いい加減にしてよ、瑛太! 早く離してよ」
「どうだ、俺でもドキドキするだろ」
瑛太が離れた時、私の顔は真っ赤になっていたと思う。
かぁっとした熱いものが体から上昇して熱を帯びていた。
でもこれは、ドキドキしたからではなくて、腹が立って怒ってるからである。
「瑛太! この間のキスといい、今回のこれといい、私許せない。ドキドキどころか、ムカムカよ」
私は思わずグーの手がてでしまい、瑛太の胸めがけて振上げた。
瑛太は笑いながら余裕でその私の手をいとも簡単に掴んでしまった。
「暴力はよくないぜ」
「これ以上、私に付き纏うのはやめてよ。瑛太のやってることは逆効果なのがわかんないの? こんなの馬鹿にされてるとしか思えない」
瑛太の顔から笑みが消えた。
それは悲しんでいるようにも見えたし、上手く行かないことにがっかりしているようにも見えた。
瑛太の手の力が緩んだので、私は振り払って、そして踵を返して一人で歩いていった。
ここは無視をするのが一番。
相手にすればそれは瑛太の思う壺となり、どんどんと瑛太は私の想像を超えてとんでもない事をしでかす。
このままではファーストキスまで奪われてしまうのではと思うと危機感を感じてしまった。
それだけは絶対に嫌!
怒りを体に溜め込んでいたので、地面に足跡がつくくらいにかなり力が入って闊歩していた。
「真由!」
後で瑛太が呼んでるがもちろん無視。
「俺、完全に嫌われてしまったみたいだな。修復不可能か?」
何を暢気にそんな事を私に聞く。
『もちろんそうよ!』と返してやりたいが、その代わりに振り向いて思いっきりあっかんベーをしてやった。
「これ以上、真由が俺になびかないのだったらさ、俺、とことん真由と拓登の邪魔してやる」
強気で睨んでいた私の顔が、一瞬で驚きの顔になり、瑛太の豹変に言葉を失った。
「だって、俺だけこんな辛い思いするなんて癪じゃないか」
瑛太は意地悪く、片方の口元だけ上げた笑みを私に見せた。
私に宣戦布告するかのごとく、いかにもそれは邪悪に次のステージへとレベルアップしたと見せ付けているようだった。
自分が報われないからといって、その仕返しを私に向ける瑛太の気持ちが信じられない。
動揺している私とは正反対に、瑛太は余裕を見せつけ堂々と私を見ていた。
その様子はいかにも本気だと言わんばかりだった。
その対決に瑛太は満足したのか、静かに踵を返し、私に背中を見せて元来た道を歩いていった。
私は呆然として暫く瑛太の背中を突っ立って見ていた。
瑛太とはどんどんこじれていき、何をしても裏目に出てしまうことが悔しかった。
瑛太は一体何をするつもりなのだろうか。
なんだか急に身震いがしてきて、怖くなってくる。
私はスマホを取り出して、そして拓登に助けを求めるように拓登のメールアドレスを探した。