私の問いかけに、朋ちゃんと石川君も同意して頷いている。その様子をみて遠野君は観念したように「わかったよ」と頷いた。

「校舎裏に屋外清掃用の倉庫があるだろ? あそこに行っていた」
「屋外清掃用の倉庫?」

 私たちは意外な告白に、3人で顔を見合わせた。校舎裏には確かに屋外清掃用の倉庫がある。園芸用の庭園の少し奥まったところだ。

「なんでそんなところに?」
「子猫を見つけて保護したんだ。あの事件の前日なんだけど、クラス当番だったから先生に頼まれて園芸用の庭園に水やりに行ったんだ。そしたら、水やり中に子猫の鳴き声が聞こえてさ。気になって鳴き声の方に行ったら、屋外清掃用の倉庫の近くで子猫が2匹鳴いていたんだ。暫く様子を見たんだけど親猫がくる気配もなかったからほうっておけなくて」
「でも、なんで昨日は給食の直後に?」
「イカのフライだったから、子猫も食べるかもしれないと思ったんだよ」と遠野君はバツが悪そうに言う。「あんまり食べてくれなかったけど」とも付け加えた。

 そこまで聞いたところで、朝のチャイムが鳴って佐藤先生が教室に入ってきたので話は中断になった。私達はそれぞれ散らばって席につく。私は席に戻った後もバトマジカードの行方を考えていた。

 朋ちゃんと時系列を整理して犯人になりそうな生徒は体育を休んだ山下さんと石川君、給食時間前後に離席していた飯田君と遠野君の4人だった。
 でも、山下さんと石川君はお互いにずっと見学していたと証言したからシロだ。
 飯田君も牧多君との証言から考えてシロ。遠野君は屋外清掃用の倉庫に行ってやってないという。

(犯人がいないわ……)

 私は壁にぶつかって頭を抱えた。
 遠野君にはこれからもう一度話を聞くとして、もし本当に遠野君が盗っていないなら容疑者が全員シロだ。じゃあ、草壁君のバトマジカードはどこに行ったのだろう?

 私は朋ちゃんと整理した時系列表をもう一度確認した。

(なにか、なにかを見落としていないかな……)

「あ、もしかして……」

 そこで、私は一つの可能性に行き当たった。

 中休みになると、私達はもう一度遠野君を囲んで話を聞いた。クラスメイトの男の子は急に私が遠野君に近づき始めたのに気付き始めたようだ。

「三田ってさー、朝からずっと遠野と喋っているよな。もしかして、好きなんじゃねーの?」