前作『太陽と月の図書室』を2019年3月28日に刊行し、ご挨拶やサイン本づくりのための書店回りもひと段落したGW前くらいに、編集部より次作についてのお話をいただきました。

そこで、これまでのおもな読者層、売れ行き傾向より、3作目は高校生主人公ではなく、大人向けの作品(あやかし、食、ミステリなど)の執筆をご提案くださり。。。自分にどんなチャレンジができるかと、いろいろと考えてみました。

あやかしモノは、もともと圧倒的多数の作品が居並ぶ人気ジャンルの上、『かくりよの宿飯』シリーズを読んでいたこともあり、これ以上のものは自分には書けないだろう。書こうと思ってもすごく似てしまうだろうと思い、挑戦心は芽生えませんでした。

美食はどうか。。。食べるのは好きでも、料理なんぞまったくしないため、これは即却下。そうなると……なんだろう、と。
幸い1作目、2作目ともに自分の好きなものを書かせていただいたのだから、3作目も同様に好きなものを詰め込もう、そう考えました。

自分がもっとも好きなものは、映画。
小説のジャンルでいえばミステリ。

じゃあ、このふたつを組み合わせたお話をつくってみよう。
そう思い立って、企画書づくりをはじめました。

ビブリア古書堂シリーズの雰囲気が非常に好みであるため、できるだけそれに近い雰囲気を出したい。まっさきに決めていたことです。これは、パクリと言われてもうしろめたさや怯む気持ちはなく、あの作品への純粋に憧れとリスペクトからです。

ヒロインのイメージはすぐに決まりました。年齢設定こそ異なりますが、実在の女優さんでいったら、綾瀬はるかさん。ほんわか、おっとりしていて、でもやるときはやる、みたいなあの雰囲気が好きなんです。

主人公設定は1・2作目を引き継いだようなキャラクター。もう1,2作はこの感じでいきたいと思っていました。

あとは、筋書き。
シネコンではなく、ミニシアターを舞台にしたいとは感じていましたが、映画館を舞台にした謎解き要素をどう作り上げるか、ここに難題が待っていました。

ミステリ自体、綾辻さんや有栖川さんらの本格モノこそそこまで多くは読んでいないものの、毎年必ず「ザ・ベストミステリーズ」という短編アンソロジーを買うくらいには好きなジャンルでした。

しかし、それを自分の手で書く。しかも映画館を舞台にして。これがなかなかの難作業となったのです。