校内に鳴り響くチャイムを合図に、教室のみんなが一斉に席を立ち、思い思いに動き始めた。今日は午前中で授業が終わりだ。

「いまからどっか寄ってく?」
「あ、わたし、いいお店見つけたんだ!」
「えー、行きたい、行きたい!」

楽しそうに笑う女子たちを視界の端で見た。本当に幸せそうだ。高校生活はこうありたいとうらやましくなるくらい。

入学式から三日経ち、初めはぎこちなかったクラスの雰囲気もすっかり緩んだ。初日のオリエンテーションでひとり一人自己紹介する時間があった。あれを境にみんな急速に打ち解けた気がする。

自分の趣味を熱く語る女子、おどけて笑いをとるムードメーカー、いきなり彼女を募集しだす男子など、みんな自分のキャラを恥ずかしげもなく露わにしてアピールしていた。この言葉は大嫌いだけれど、「スクールカースト」とかいう序列がこの瞬間決まったのかもしれない。

それなのに僕はといえば……。

自分の名前を口にしてから、
『えっと、趣味は読書です。よろしくお願いします』
なんの面白みもないコメントを、表情も変えずにボソボソと言っておしまい。
まばらな拍手には、『コイツ、微妙』というムードが漂っていた。

もちろん、しゃべりが達者じゃなくても認められる連中だっている。イケメンだったり、アイドル並みにかわいい子だったり、彼らは寡黙だったとしても外見のオーラだけで十分おつりがくるだろう。

でも、残念ながら僕はソチラ側の人間ではない。
だから凡人は凡人なりに、人と積極的にかかわるためにそれなりの努力をしなければいけないのだろうけれど、結局それも怠ったせいか、この三日間、昼休みも放課後もだれとも話していなかった。

窓際の一番うしろ、ここが僕の席だ。