古物時計店『時ほぐし』は、奇矯な店長と女性店員が高級時計を売買している。
 ある日、一組の父娘(おやこ)が腕時計を売りに来た。
 スイスの高級時計『ウブロ』だが、なぜか娘は売却に反対し、父を止めていた。
 なぜ娘はウブロにこだわるのか?
 それはウブロの異名『成功者の時計』にちなんで父が買った、家族の記念品だったから。だが今は家庭崩壊の危機にあり、泣く泣く売りに来たという。
 話を聞いた店長と女性店員は、どうすべきか考える。
 二人はかつて大手時計メーカーに勤めていたが、お客様一人一人の声を身近で聞くために独立した経緯を持つ。だから客の悩みを放っておけない。
「時計にまつわる悩みを解きほぐす(・・・・・)――それが古物時計店『時ほぐし(・・・・)』です」
 やがて、娘はウブロを奪おうと強盗に入るが、店長が場をいさめ、いずれ娘が時計を買い戻す日まで取り置きしておくことを約束した。