どこから放たれるものなのか。
それを探る間もなく、邪悪な気配はすぐになりを潜めてしまった。
訝し気に眉を顰めていたミヅハが緩やかに警戒を解いていく中、無事を確認するように私へと視線を向け、瞠目する。
「なぜ、泣いてるんだ」
「わ、わからないの」
さきほどの寒気で感情の波は少し落ち着いたものの、まだ涙は枯れず頬を伝っては落ちていく。
「おかしいよね」
苦笑すると、ミヅハの手がこちらへと伸ばされて、頬を濡らす涙を拭ってくれようとしたのだが。
──バチバチッ!と電気が走り、触れることを拒むようにミヅハの手を弾いた。
「っ……なんだ?」
「だ、大丈夫!?」
「ああ……いつきは?」
「私は全然、痛みも何も」
ミヅハは「そうか」と頷き、赤くなった自分の手と私を交互に見て「さっきの邪気と関係があるのか?」と誰ともなしに問いかける。
邪気が私に何かをした、ということだろうか。
だが、私には寒気を感じただけであとは何も変化はない。
というより、そもそも清浄な伊勢の神域には妖邪も邪神も侵入することはできないはず。
一体何が起こったというのか。
その後、涙は止まるも、ミヅハが私に触れようとすると弾かれる現象は解消されることなく。
東の空が僅かに白み始めた頃、疲れていた私は睡魔に襲われ、ここで寝てしまっては邪気を警戒して共にいてくれているミヅハに申し訳ないと思いながらも、いつの間にか瞼を閉じてしまったのだった。