絹のような髪からふわりと漂う嫌味のない清潔な香り。
未だかつて、こんなにも近くでミヅハを感じたことがあっただろうか。
こんな、まるで抱き締めているかのような体勢、誰かに見られたら誤解されそうだ。
しかし、どうやって動けばいいのか。
私の看病をしてくれ疲れているところ申し訳ないけれど、いっそ起こしてしまった方がいいのではと心中で四苦八苦しているうちに、ミヅハの頭がずるずると前に下がっていく。
「わ、わ」
体勢を立て直そうにも体格差のせいでうまくいかず、ついには支えきれなくなってしまい、共に布団の上に寝転んでしまった。
これはさすがにミヅハも起きるかと思ったが、やはり疲れさせてしまったのか瞼が持ち上がる気配はない。
それどころか、ようやく横になれたと言わんばかりに穏やかな寝息を立て始めた。
押し倒される形にならなかったのは幸いだけれど、ミズハの上半身が布団を斜めに切るように寝転んでいる為、残念ながら私の寝る場所はなくなってしまった。
母様の部屋にお邪魔して、隣で寝させてもらおうかと考える。
しかしそれだと、ミヅハが目覚めた時に私がいないことでさらに心配をかけてしまうかもしれない。
ならばこのままこの部屋にいた方がいいのだろうが、いかんせんスペアの布団を持ち合わせておらず、けれど、めまいがあったせいか体が重い気がするので布団置き場までいくのも少しおっくうだ。
嫁入り前の女性として、はしたない行為であるとわかりつつも体調を優先し、ミヅハに毛布を掛け直すと空いているスペースに横になった。