寝巻に着替えたいところだが、ミヅハがいては難しい。

 それにしても、目覚めたらミヅハがいたのは天のいわ屋に引き取られた日以来な気がする。
 あの時ミヅハは、目を覚ました私を見て大粒の涙を流していたなと懐かしくなっていたところで思い出した。
 私の記憶は天河の間で途切れているのだ。

 天宇受売様の舞を見て、酔ったカンちゃんが話しかけてきた。
 それから、龍芳という名前を聞き、ミヅハと目が合った直後……そうだ、めまいを感じたのだ。
 そこからの記憶がないということは、私は多分、意識を失ってしまったのだろう。
 だからミヅハが心配し、こうして側についていてくれた。
 そういうことなのだろう。

 今回は事故に遭ったわけではないけれど、相変わらず心配ばかりかけて申し訳がない。
 うたた寝するミヅハに、「ありがとう」と声を潜めて伝えると、私の身体がぶるりと震えた。
 梅雨の時期、朝晩はまだ少し冷える。
 見ればミヅハは座布団の上に座っているだけで、何も寝具を使ってはいない。
 水神とはいえ、そのままでは寒いだろうと考え、私は自分にかけている薄手の毛布を一枚取って、そっと彼の肩に掛けたのだが、温もりを感じて完全な睡眠スイッチが入ったのか、それとも単にバランスを崩しただけなのか。
 ミヅハの身体がぐらりと私の方へと倒れ込んで、慌てて受け止めた。