昨日の一夫多妻制の話で私は愚痴を零し、今は憧れの眼差しでふたりを見ていた。
 だから、昨日よりもハッキリと、不安を取り払おうとしてくれているのだ。

 理解した私は、小さく頷き顔を隠すように俯いた。
 ああ、頬が熱い。

「俺には、いつきだけでいい」
「ど、どうしちゃったの。ミヅハ、婚姻の話が出てから少し変だよ」

 ミヅハからこんなにもストレートな愛情表現を向けられるなんて何年振りだろうか。
 さらに集まる熱をどうにか逃がそうと両手で仰いで、ふと思いつく。

「もしかして、母様に何か言われた?」

 母様は婚姻することは決定だと言っていた。
 ならば、少しは優しくしろとか、愛の言葉でも囁け、なんて言われたのではないか。
 そして、さっき母様の部屋に行った際、念を押された……という流れかもしれない。
 それとも、婚姻に対して腹をくくり、私を好きになろうと努力をしているとか。
 もしくはどちらもだろうかと勘繰ってミヅハをそっと見れば、いつから見つめられていたのか、彼の瞳は私を真っ直ぐに捉えていた。

 アンコールによって再び演奏が奏でられ、軽やかな音色にミヅハの声が重なる。

「……もう、無理に遠ざける必要がないと、わかっただけだ」

 視界の片隅に、扇片手に舞い始めた天宇受売様の姿が映るも、ミヅハの瑠璃色の瞳に捉えられ、そちらに視線を向けることができない。