「あっ、天宇受売様の舞を!? とても嬉しいお誘いですけど、お気持ちだけで十分ですから、貴重な時間をどうぞおふたりでお過ごしください」

 神楽や芸能の神である天宇受売様の舞は、滅多に拝めるものではないのでお誘いは非常に魅力的だ。
 しかし、庭園はおふたりの寛ぎの時間のために作ったもの。
 お邪魔したくて作ったのではないので、ありがたく思いつつお断りさせてもらったのたのだが。

「遠慮なさらず。せっかくこんなに趣のある空間をしつらえてくださったんです。彼女の舞をぜひ、天のいわ屋の皆さんにも見ていただけたら僕も嬉しいです」

 猿田彦様にまで誘われてしまっていよいよ断り辛くなってしまう。
 ちらりとミヅハに視線を送って確かめると、彼は静かにひとつ頷いた。
 おふたりの感謝の気持ちを受けるように、と。

「本当にいいんですか?」
「もちろん! 観客は多い方が私も踊り甲斐があるし、ぜひぜひ!」

 天宇受売様が心から喜ぶように賛成し、ミヅハの許可が下りたことで私の気持ちもすっかり前を向く。
 舞を見せてもらえるという嬉しい気持ちが顔に出てしまい、満面の笑みで一礼した。

「ありがとうございます。楽しみにしてます!」

 私の隣に立ったミヅハもまた頭を下げ、後ほど夕食と共にキャンドルを灯すことを告げると、私たちは天河の間から退出したのだった。