本当に、婚姻の話が出てからというものミヅハの態度には戸惑うばかりだ。

 荷物をミヅハにお願いし、密かに深呼吸をする。
 次いで、歩きながら微笑みを携え、猿田彦様と天宇受売様を振り返った。

「昨日ご説明があったかと思いますが、本日のお部屋は暁天の間ではなく天河の間となります」
「うん、聞いてるよ~。暁天の間に劣らないくらい、庭園を素敵にしてくれるって話だったよね」
「なんだか僕らのためにお手数かけさせてしまい、申し訳ないです……」

 楽し気な天宇受売様とは対照的に、肩を小さくして恐縮する猿田彦様。
 まったく正反対な性格のおふたりだけれど、つい頑張りすぎてしまう猿田彦様には、明るく前向きにフォローしてくれる天宇受売様がお似合いだとつくづく思う。
 気を遣う猿田彦様に、私は小さく首を振った。

「いえ、おふたりに少しでも安らいでいただければとこちらが勝手にやったことなので気に病まないでください。むしろ、いつものお部屋をご用意できなかった上、ご満足いただけなかったら私の方こそ申し訳ないです」

 提案した者として、不安がずっと付きまとっている。
 昨夜も、準備が間に合うのか、喜んでもらえるだろうかと考えていたら寝不足になってしまったほどだ。
 どうか少しでも気に入ってもらえますようにと、誰ともなしに祈りながら天河の間の扉を開いた。