何やら咎められたカンちゃんは「大丈夫だって」と手で制止すると、会話の続きを促すように私を見た。
「えっと、ミヅハには話してないけど」
「そっか。なら、オレから言えるのはこれだ。夢の中のオレも、今のオレも、ずっと変わらず姫さんの味方だ。大角もそうだろ?」
「ああ……」
「ずっと、変わらず?」
夢の中のカンちゃんと今ここにいるカンちゃんは別ものだ。
ずっと、という言葉は、続いているものごとに対して使う言葉なのではと、その違和感に首を傾げる私に、カンちゃんは微笑んで頷いた。
「そそ。てか姫さん、早くやっちまわないと猿田彦さんたち来ちゃうぜ」
「あっ、そうね! 大角さん、鉢にお水張ってもらっていいですか?」
「わかった」
腑に落ちない点はあるものの、今優先すべきは目の前の仕事だ。
カンちゃんが綺麗にしてくれたガラス鉢を受け取って庭園に置くと、大角さんが水を注ぎ始める。
「オレはあとふたつガラス鉢持ってくるよ」
「うん。お願いします」
カンちゃんが納戸へ向かうのを見送ると、私は「よしっ」と気合を入れる。
そうして、猿田彦様と天宇受売様に喜んでもらえるようことだけを考えて、鮮やかに咲き誇る紫陽花を水に浮かべていった。