四年前、あと数日で高校の入学式を控えていた私は、北国から宿泊に来ていた寒がりな雪女の【銀花(ぎんか)】さんたっての要望で、郵便局から大量のホッカイロを送った。
 身軽になった帰り道。
 具合が悪そうに歩いている豆ちゃんを見つけた直後、彼はふらりとよろけて車道へ出てしまったのだ。
 そこを間一髪で助けたのがきっかけで、豆ちゃんは天のいわ屋に何度も通い私に懐いてくれるようになった。
 ただ、下手をすれば私が死んでいたのかもしれないと、母様やミヅハだけでなく、従業員皆に叱られた記憶がある。

 命あっての物種。
 幼い頃にせっかく助かった命を、どうか無下にするな、と。

 あの時は、いつもは笑って励ましてくれるカンちゃんも、温かく見守ってくれる大角さんも厳しい顔をしていた。
 ごめんなさいと謝る私に、本当に生きていてくれて良かったと悲しそうに笑って許してくれたけれど、その表情はあの夢に出ていたふたりのものに似ていた気がする。

「あ、もしかして、その記憶と時代劇が混ざったのかな?」

 つい声にしてしまった疑問に、カンちゃんが「なんの話だ?」とガラス鉢を布で拭きながら問いかけた。

「カンちゃんと大角さんが夢に出てきたの」
「おっと。夢に見てくれるなんて、姫さん、オレのこと好きす」
「どんな夢を?」

 わざとカンちゃんの言葉を遮った大角さんには小さく笑ってから夢の内容を話す。