その後、キャンドルや和傘などの小道具を持ってきたミヅハが合流し、室内の掃除が落ち着いたところでいよいよ庭園の改造に着手する。

 寝具の替えなどを持ってきてくれた大角さんと、大浴場の清掃を済ませたカンちゃんもやってきて、手伝ってもらいながら順調に庭園を飾り付けていく。

「いつき様! このキャンドルはこの辺りでいいですか?」
「うん。ありがとう豆ちゃん」
「衝立はどこに置く?」

 大角さんに訊ねられ、広い濡縁まで下がり全体を見渡しバランスを見た。

「右側の灯篭の隣あたりでお願いします」
「わかった」

 倒れたりしないよう、慎重な手つきで衝立を置いた大角さんに礼を伝えてから、思いのほか衝立の色味が強いことに気付く。
 「んー」と小さく唸っていると、水に浮かべる用の紫陽花を運び入れていたミヅハが隣に立った。

「どうした?」
「衝立の後ろにキャンドルの灯りだけじゃ弱そうかな?」

 衝立の後ろから光を当て、絵柄を引き立たせたかったのだが、高さもそこそこあるのでどうにも微妙そうだ。
 ミヅハは「そうだな……」と衝立を眺め、その視線を私へと移す。

「もう少し強い光を当てた方が良さそうなら、夕星に声をかけるが」

 夕星さんに狐火を出してもらってそれを燭台に灯し、後ろから照らすという寸法だ。
 普通の蝋燭よりも狐火の方が遥かに明るく、ならば頼んだ方が良さそうだとふたりで判断し、フロントに用があるからついでに伝えてくるというミヅハに礼を述べつつ任せた。