「わぁっ!? ま、豆ちゃん」
「掃除してお腹が空いたという解釈ですか?」
「え、ど、どうかな。はたきの魂がぺっこぺこって叫んでるだけで深い意味は……」
「魂! じゃあ、はたきの付喪神の心ですね」

 なるほどと手を打つ豆ちゃんは、じっちゃんだかばっちゃんの名にかけて謎を解明したかの如く瞳を輝かせた。

「その面妖な歌、もしかして現世で流行っているんですか? 一昨日、若旦那も歌ってたんです」

 豆ちゃんの言葉に、そういえばとさくちゃんへのお土産を手に内宮さんに寄った時のことが脳裏をよぎる。

『ところで、いつき様』
『なに?』
『さきほど宿で耳にしたんですけど、ミヅハの若旦那が、なにやら面妖な歌を』

 話している途中でさくちゃんに会えたために、その後も流されてしまっていた話題が面妖な歌についてだったはず。
 つまり、ミヅハがこの歌を歌っていたということだ。

 彼が歌っているところなど見たことも聴いたこともなかったので、内心驚いていたのだが、まずは豆ちゃんの質問に答える。

「面妖なつもりは微塵もないけど、この歌は母様と私が作ったの」
「瀬織津姫様といつき様が作った歌なんですか!?」
「そう、今のは【お掃除はつらいよ〜はたきよ、気合を入れろバージョン〜】ね」
「他のバージョンもあるんですね!?」

 目を丸くした豆ちゃんは、縞模様の尻尾までピンと立てて興奮している。