「ごちそうさまでした!」
「ごちそうさまです」
ミヅハも同じく食べ終えて、同時に手を合わせる。
簾の向こうから「お粗末さまです~」と控えめな声が聞こえると、私たちは食器を戻して立ち上がった。
「それじゃ、準備に入ろうか?」
「ああ。納戸から昨日買ったものを持ってくるから、先に部屋に行っててくれ」
「わかったわ」
いよいよ猿田彦様と天宇受売様に気に入っていただける庭園に改造すべく、ミヅハは宿の二階にある納戸に向かい、私は一階にある天河の間へと移動する。
良く磨かれた廊下を歩き、中庭を横目に進むと天河の間に到着。
向かい側の従業員用の扉を開け、しまってある掃除用のワゴンを引き出した。
客室の玄関扉は二重構造になっており、格子扉をスライドさせてから内側にある鍵付きの玄関扉を押し開ける。
まずはいつもの手順で清掃を開始。
玄関でスリッパを整え、ワゴンからはたきを取り出すと、げた箱の上のほこりを払う。
そうして、私はこれまたいつも通りに口を開いた。
「耳を澄ませて聞いてごら~ん、はたきの魂が~叫んでる~。ぴかぴっかーのぺっこぺこ~」
「なぜぺこぺこなんですか!?」
気持ちよく歌いながら手を動かしていたら、廊下からひょっこりと豆ちゃんが顔を出し、心臓が驚きに跳ねる。