桶の中にぎっしり敷き詰められた肉厚なマグロの上には、ゴマと海苔がかかっている。
 ひと切れ箸で掴んでぱくりと頬張ると、漬けダレのほどよい甘さとゴマや海苔の風味が広がった。
 噛めばあっという間に脂ののったマグロが、口内でとろける。

「ほっぺまで一緒にとろけちゃいそうなくらい美味しいです、豊受比売様~!」
「あ、ありがとうございます~」

 簾の向こうから可愛らしい声が返ってきた直後、シャッター音が聞こえた。
 「()え~」という満足げな豊受比売様の声も続いたが、あえて突っ込まずに食事を楽しむことに専念する。

 一緒に出てきた赤出汁のお味噌汁も、出汁がしっかりと効いていて絶品だ。
 一休みしたところで、もう一切れ、今度は酢飯と一緒にいただくと、爽やかな酸味と漬けダレの甘みに加え、マグロの旨味も同時に味わえて箸が止まらない。
 黙々と食べているミヅハも、きっと同じ状態なのだろう。
 滑らかな食感のマグロを堪能しつつ、最後まで美味しく食べきった。