こちらまで頬が緩まるのを感じながら、私はお箸を持つと赤福餅をひとつ頬張る。
 作りたての餅は滑らかで柔らかく、こし餡のしっとりとした舌ざわりと絶妙にマッチしていて最高だ。

「これぞ本店でのみ味わえる至福……」

 お土産の赤福餅も美味しいけれど、作り立ては別格で、一度食べたら忘れられない。
 伊勢参りに毎年訪れるという参拝者に、必ず赤福餅を食べて帰るという人が多いのも納得だ。
 また、この赤福餅のあとにいただく番茶も香ばしく、口の中をさっぱりとさせてくれる。

 ふたつめの赤福餅の絶妙な美味さに再び舌鼓を打っていると、ミヅハもかき氷の底に隠れている、氷に馴染むように作られた特製のこし餡と餅を堪能しているところだった。

「冬の赤福ぜんざいも食べに来ようね」
「ん」

 食べることに忙しいミヅハが短く答えて、私は番茶を飲みながらホッと一息つく。

 冬にぜんざいを食べに、また赤福へやって来る。
 その頃、私とミヅハは結婚しているのだろうか。

 そういえば、先ほど神大市比売様は二番目の妻であることを気にしていた様子だった。
 私はあまり詳しくないけれど、神様は一夫多妻制が普通なのだろうか。
 今、赤福氷を心置きなく堪能しているミヅハも、私と結婚した後、別の人を娶る……という可能性があるとしたら。

「……それは……嫌だな」

 思わず零してしまった声を拾ったミヅハが、私を見る。