「うちに入荷しているKOZŌの傘はこの七本になります。お気に召すものがあればいいんですが……」
神大市比売様がひのきでできた展示台に並べた傘を見る。
季節を意識して製作したのか、紫陽花を彷彿とさせる色合いのものが多い。
これならばいけるのではという期待を胸に、私はまず紫色の番傘を手に取った。
「広げてみてもいいですか?」
「ええ、もちろんです」
了承を得て丁寧に傘を開くと、しっかりとした竹の骨組みに貼られた菫色の和紙が花のごとく咲く。
描かれているのは金色の花びらと共に舞う二匹の蝶。
「わ、すごく綺麗……!」
「その蝶は夫婦なのだそうですよ」
「そうなんですね!」
猿田彦様と天宇受売様は夫婦だし、おふたりをなぞらえていていいかもしれないと考えつつ、次に白地の傘を開いた。
こちらは良く見ると薄い水色で万華鏡のような柄が和紙いっぱいに描かれている。
内側からライトで照らせば万華鏡が浮かび上がって、夜の庭園でかなり映えそうだ。
そうして次々と開いていき、購入を決めたの番傘は三本。
最初に見た蝶のものと、万華鏡のもの、そして桃色の胴から軒の白へと色を変えていく傘自体が花びらのようなもの。
あとは、傘とは別に華やかな色合いの衝立もひとつ購入させてもらった。
「では、こちらの品々を後ほど天のいわ屋にお送りしますね。夕刻までには鶏たちに届けさせますので」
「はい。よろしくお願いします」
根の堅洲国で使われている通貨で支払いを済ませると、神大市比売様は私とミヅハを見て眦を下げる。
「それにしても、ふたり並んでいるとまるで夫婦のようですね」
「えっ!?」
驚いて声を上げた私の横に立つミヅハも、目を丸くし僅かに視線を揺らした。