「実は和傘が欲しいんですけど、置いてますか?」
「和傘でしたら、KOZŌの新作がいくつか入荷していますよ」
「KOZŌの! 見せてもらってもいいですか?」
「ええ、もちろん。少し待っていてくださいね」
店の奥に向かう神大市比売様を目で追いながら、私は心を弾ませる。
KOZŌとは、からかさ小僧とひとつ目小僧のあやかしふたりが起ち上げた和傘ブランドで、ここ数年、神やあやかしの間で人気なのだ。
デザインはひとつ目小僧が担当で、シンプルなものからモダン、カジュアル、スタイリッシュと幅広く、からかさ小僧の高い技術により一本一本手作りされている。
店に並べば僅か数日で販売終了となる為、在庫があるのは幸運だ。
「KOZŌの傘なんて買っていったらカンちゃんが欲しがりそう」
「干汰は流行ってるものは何でも欲しがるからな」
「自称あやかし一のオシャレ番長だものね。ところでこの絆創膏は人には使えないのかな?」
さきほど手にしたままだった手のひらサイズの箱をミヅハに見せて問うと、商品を見ただけで「それは神とあやかし専用のだ」と彼は教えてくれた。
詳しく聞けば、治癒に特化したまじないが施されており、怪我の治りを早くする効果があるらしい。
しかし、そのまじないは神やあやかしの身体に巡る気に反応し作用する仕組みなので、人に貼っても効果は得られないとのことだ。
「人間にも効けばいいのになぁ」
絆創膏を見つめながら声を零すと、ミヅハは手にしていた買い物袋をそっと足元に下ろし腕を組む。