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 ──柔らかな光と心地よい香りに包まれた店内から出た私は、荷物を持ってくれているミヅハを振り返る。

「猿田彦様と天宇受売様、気に入ってくれるかな」
「かなり吟味したし、大丈夫だろう」

 キャンドルショップで購入したのは、さざ波のように線が浮かびあがるシルエットグラスとキャンドルのセットだ。
 手のひらほどの大きさのものを十個、ひと回り小さいものを十個。
 庭園には灯篭の灯りもあるので、ライトアップとしてはこれくらいの数で足りるだろう。
 あとは和傘と衝立が用意できれば、ひとまずは形になりそうだ。

「和傘は宿にあるものでいけるかな?」
「洒落たものでなくてもいいのなら」

 言われて思い出してみれば、確かに宿に置いてある蛇の目の和傘には宿名と神紋が入っているので、魅せるおもてなしとしてはいまいちの印象だろう。
 何より、梅雨という季節を活かし、傘で紫陽花を表現するのも雅なのではと考えているので、やはり新調するのが良さそうだ。

「やっぱり、おおいち堂に寄ってもいい?」

 神大市比売様のお店には様々な種類の品物が売られている。
 食品から雑貨に家電まで、現世では売られていない珍しい物も、決して狭くはない店内に所狭しと並んでいて、お邪魔する度に心が躍るのだ。