ミヅハは、肯定も否定もしない。
ただ、静かに「人の身を持ちながら、人の理から外れることになる」と教えてくれた。
「そう、なんだ……」
人のまま、人非ざる存在になる。
なんとも中途半端な存在だと思いつつも、元々自分が中途半端な位置にいることに気付く。
幼い頃から、私の仲良しは人ではなく神やあやかしたちだった。
そして今、私は人でありながら神の経営する宿で働き、神やあやかしたちと交流を深めながら過ごしているのだ。
もちろん、岩井桜乃という人間の友人もいるけれど、彼女は私と似た力を持つ存在。
ありのままの私でいられ、受け入れてくれている点を踏まえると、感覚的には神やあやかしと接している時に近いかもしれない。
しかし私は人間だ。
でも、人には視えないものを視ることができる私を、多くの人々は奇妙な目で見る。
そして、天のいわ屋で働く私に、奇異、好奇な眼差しを向ける神やあやかしがいるのも事実で。
どちらの世にいても、私はなんとも中途半端なのだと思わされる。
そんな取り留めもないことを考え、うっかり思考の海に片足を突っ込みかけた私の意識を引っ張り上げたのは、ミヅハの意外な問いかけだ。
「……俺と婚姻を結ぶのはいやなのか?」
「へぁ!?」
思わず変な声が出て、今度は私が足を止めてしまうとミヅハも合わせて立ち止まる。