一体何のための結婚なのか。
 ふたりで幸せになって欲しいというのは、何をもってそう思うのか。

 相も変わらず疑問ばかりが浮かぶこの結婚話に首を傾げていると、ミヅハが溜め息を吐いた。

「え、何でそこで溜め息なの?」

 もしや面倒だと思われての溜め息なのかもしれないが、しかしそうであるならば、わからないことだらけで溜め息を吐きたいのはこちらも同じ。
 さらに言わせてもらえば、今まで幼馴染のように共に成長してきた相手と結婚と言われ、ミヅハは何も思わないのかと唇を尖らせかけた時だ。

「損得なんてどうでもいい」
「……え?」

 淡々とした口ぶりのようでいて、僅かに熱のこもったミヅハの声に私は瞬いた。
 迷いを持たない瑠璃色の双眸が私を見下ろしている。

「俺は、相手がいつきなら、そんなものどうだっていい」

 淀みなく紡がれた思いもよらない言葉に、胸の鼓動が強く打つ。

 質問を投げかけたのは私の方だったけれど、こんな豪速球を返されるとは予想もしていなかった。
 相手が私であるのなら損得など関係ないなど、いいように受け取るならば、まるで愛の言葉ではないか。

 どういった意味で彼が今の言葉を口にしたのか、胸を高鳴らせながら測りかねていると、ミヅハは戸惑う私から視線を外し、参道へと視線を戻した。