夏のお伊勢さんといえば、伊勢土産で有名な【赤福】の赤福氷だと言っても過言ではないだろう。
 私の提案にミヅハはしっかりとひとつ頷いた。

「大賛成だ。お土産に赤福餅も買っていいか?」
「宿のみんな用に?」
「と、自分用に二箱……いや、三箱か?」

 数を真剣に悩み始めたミヅハは、いつも通りの甘味に目がないモードの彼だ。
 昨日と今朝に比べたら機嫌も良さそうに見え、今ならばと、私は婚姻を結ぶことについて尋ねてみることにする。

「ね、ミヅハはいいの?」
「三箱で満足なのか、ということか?」
「赤福餅の話じゃなくて、母様が言ってた婚姻のこと」
「ああ……そっちか」

 スイーツの話ではなくなり、ミヅハが明らかにテンションダウンしたのが見て取れた。
 空気を読めない女で申し訳ないと思うけれど、母様の希望では婚姻を結ぶのは今月か来月中だと話していた。
 あまりのんびりと構えてはいられないのだ。

「ふたりが話していた”あの時”とか、なぜ母様が私とミヅハの婚姻を望むのかは私にはわからないけど、どんな理由があるかはさておいて、水神様であるミヅハにとって人間の私との婚姻は何の得もないでしょう?」

 私は、神様やあやかしを視れる体質ではあるけれど、ではそれが神にとってプラスであるかと言われたら疑問だ。