実は、母様は今日から暫く休みになった。
 本人は大げさにしなくてもと笑って働く気満々だったけれど、やはり神族が倒れるにはそこに普通ではない何かがあるのだ。
 原因はわかっていると母様は言っていたけれど、解決しない限りはまた倒れる可能性はあるということ。
 明かしてもらえないなら、せめて暫くは様子を見て休んでほしいと今朝方部屋に赴き願い出たところ、どうにか了承してもらえた。
 ミヅハにも同じように言われたのだと笑いながら。

「瀬織津姫が休みの間は、無理のない範囲で俺が出来る限り対処するよう努める」

 ミヅハが告げると、夕星さんとカンちゃんは「了解」と声をハモらせた。

「で? いつきさんの提案についてはどうする? やるのならすぐに交渉の使いを出すけれど」
「つーか、準備は誰がやるんだ? オレは湯殿の掃除が終われば空いた時間に手伝えるぜ」

 夕星さんに続いて、カンちゃんが休憩室の柱時計を確認しながら話す。

「あ、それなら私がやるわ。これから休憩だし、蝋燭とか必要な物も見繕って買ってきます」

 言い出しっぺは自分だし、自分に出来ることはやりたい。
 そもそも、私が天のいわ屋で働く道を選んだのは、母様に育ててもらっている恩を少しでも返すためだ。
 そして、人である私の存在を邪険にすることなく、成長を温かく見守ってくれた従業員の皆の役に少しでも立ちたいという思いもある。