天宇受売様の舞のイメージに合う舞台に仕上がれば、天河の間の庭園でもきっと満足してもらえるはずだ。
私の提案に、夕星さんが表情を明るくする。
「ライトアップってやつだね! いいね! 素敵な発想だし、何よりボク好みの演出だ。もし必要なら、ボクの狐火もライトアップに使ってくれてかまわないよ」
美しいものが大好きでナルシス……いや、ロマンチストな夕星さんはそう言うと、手のひらに小さな青い炎を出現させて浮かべた。
「おっと、それならオレも水芸で楽しませてやれるぜ」
カンちゃんがなぜか夕星さんに対抗するように手のひらから水を繰り出す。
ピュンと水鉄砲のように軽やかに飛ばされたそれは、偶然かはたまた狙ったのか、夕星さんの狐火を消火した。
「おい、河童君。わざとか?」
「いいや? 狐君、たまたまだ。それより若旦那、どうすんです? 女将に許可取ってきます?」
「いや、働けるとごねていたのを無理に休んでもらってる状態だ。ここで相談しようものならここぞとばかりに働きかねない」
「想像つきますねぇ」
カウンターに頬杖をついてカンちゃんが苦笑する。