おふたりの来訪はいつも当日か翌日と急なもので、加えて天のいわ屋自慢の日本庭園が眺められる離れの特別室、暁天の間を所望するのだ。

 ちなみに天のいわ屋は全部で八つの客室がある。

 一階に特別室離れ【暁天の間】、特別室【天河(てんが)の間】の二部屋。
 二階に【蒼天(そうてん)】【幽天(ゆうてん)】【水天(すいてん)】【昊天(こうてん)】【上天(じょうてん)】【玄天(げんてん)】の六部屋だ。
 各部屋の広さはそれぞれに違うが、清潔感を保ちお客様に満足していただけるよう尽くしている。

「別日での提案は?」

 ミヅハが確認すると、夕星さんは宿帳に記載された予約リストのページを開いた。

「もちろん、暁天の間が空いてる日を伝えて確認したけど、今月は猿田彦様が多忙らしく、明日と明後日の二日しか空いていないようなんだ」
「あー、あれだな。なんだっけ……ずーっとフライト?」
「君は相変わらずカタカナに弱いな。ジューンブライドだろう。ずっとフライトも多忙そうだが」

 会話に参加したカンちゃんに突っ込みを入れた夕星さんのキーワードに、ミヅハは「挙式が増える時期か」と納得した。