ミヅハがネタにした頭頂部の皿というのは、河童の頭にある禿げ上がった皿のことだ。
 河童にとって皿は重要で、乾けば力を失い、割れれば生命を失いかねない部分だとカンちゃんから聞いている。
 実際、夏はこまめに水分補給をしているようだ。
 しかし、私はその現場を目撃したことはない。
 何故なら、オシャレ好きなカンちゃんにとって、皿はカッコ悪い部分であり、見られたくないパーツでもあるかららしい。
 だから人目につかないよう隠れて補給しているのだとか。

「まあほら、誰しも欠点はあるものだし、私はお皿があろうとなかろうとカンちゃんは素敵だと思うよ」
「姫さん……天女かよ。お茶、奢らせてもらうぜ」

 カウンターの端に置かれた盆に並ぶ湯呑から、新しいものをひとつ取って、急須からお茶をいれてくれたカンちゃん。

「めっちゃ無料。でもありがとう。いただきまーす」

 淹れなおして時間があまり経っていないのか、ほどよい温かさのお茶を口に含んだところで、自分が口にした言葉に、自分で気づかされる。

 そうだ。誰にでも欠点はあるのだ。
 ミヅハから見たら私だって欠点だらけだろうし、何より私は人間だ。
 水神であるミヅハからすれば、何の得もない結婚となるはず。

 本当に、なぜ母様は私とミヅハの結婚話など持ち出したのか。