「……ん?」
一瞬、母様が発した言葉の意味がわからず、首を傾げ自分の中で整理を試みる。
今月か、来月中に、婚姻を、結ぶ。
婚姻を結ぶというのは結婚するということで間違いないだろう。
「え? 誰と誰が?」
「だから、あんたたちふたりが」
母様の答えに、私の脳はついに処理しきれなくなった。
いつもは感情をあまり表に出さないミヅハも、さすがに目を丸くしている。
「私たちが、ちょいとばかり婚姻を結ぶってなに」
ちょっとそこまでふたりで買い物に行ってきてくれ、みたいなノリで結ぶ婚姻なんてあるのか。
あまりにも突然の頼みごとに状況がうまく呑み込めない私の横で、黙っていたミヅハが口を開く。
「なぜ、俺といつきなんだ」
「それは、あんたならわかるはずだよ、ミヅハ」
母様の強い眼差しを受けたミヅハは、視線を両の手を置く自分の膝に落とし、暫し黙考する。
そして、思い当たる節があったようで、顔を上げると母様を真っ直ぐに見つめた。
「あの時の言葉に繋がるのか?」
「ああ、そうだよ」
「そう、か……」
「な、なんのこと?」
何やらふたりの間で通じるものがあるようだが、私には全くわからない。
完璧に置いてけぼりをくらっている状態だ。
ミヅハにはわかる”あの時の言葉”とは何なのか。
わからないのなら尋ねるのが一番。
私は姿勢を正すと、母様とミヅハへ交互に視線を送る。
「お願いだから、私にもわかるように説明してほしいんだけど」
私の真剣な眼差しに、母様は表情を硬く厳しいものに変え……
「あいたたたたたたた!」
突然、腹部を押さえながらうずくまった。