天のいわ屋の広間には、よく知る顔が揃い賑わっている。
今日、私たちはここで祝言を挙げた。
金の屏風を背に、ミヅハと並ぶ私が纏うのは婚礼衣装。
生命を象徴する紅色の色打掛に、婚家の色に染まる決意を表す真っ白な白無垢。
胸元の筥迫と懐剣は、水神であるミヅハのイメージに合わせた紺色をあしらっており、母様が差し込んでくれた。
懐剣を母親が差し込むのには、「家族を守る覚悟を持ちなさい」という意味が込められているのだ。
濃紺の紋付袴を着たミヅハと三々九度を交わし、天宇受売様が祝言舞を披露してくださった。
後は、飲めや唄えやの楽しい宴の時間だ。
笑み零し、酒を酌み交わすそのほとんどが神やあやかしなのだが、本日は私以外にも人間がひとり、迎え入れられた。
招待された彼女は、隠し切れない神の神気とあやかしたちの妖気に最初は戸惑っていたけれど、さすがというべきか今ではすっかり場に馴染んでいる。
彼女は、朝霧さんに促され席を立つと私とミヅハの前にやってきた。
「いっちゃん、結婚おめでとう。とっても綺麗……」
「ありがとう、さくちゃん」
「朝霧さんから何があったか聞いた時は驚いて声も出なかったけれど、こうしてお祝いができて良かったわ」
「さくちゃんがあの時話してくれていなかったら、私は今ここにいなかったよ。さくちゃんは親友で、命の恩人よ」
本当にありがとうと今度は別の感謝を伝えると、さくちゃんは役に立てて良かったと笑みを浮かべた。