──シャン、シャンと、どこからか神楽鈴の音が聞こえるのをぼんやりと傍受する。
「永き契を結び固めて──」
のびやかで柔らかな男性の声が暗闇に広がり、私は夢現に耳を傾けた。
「互に心を結び、力を合わせて、相助け相輔ひ」
それが猿田彦様の紡ぐ祝詞であると気付いた時、自分の体の変化に気付く。
渇いた喉を潤すように、よく知った神気が私の体に流れ込んでくるのだ。
心地よさにゆっくりと目を開くと、白い光の中に、今にも泣き出しそうなミヅハの顔が見えた。
「ミヅハ……」
私の声は掠れていて、「いつき」と返すミヅハの声も掠れていて。
だけど、その言葉だけははっきりと聞こえた。
「いつき、俺も、いつきだから惹かれたんだ。いつきだから添い遂げたい。どうか、共に生きてほしい」
私の告白に対する、真っ直ぐなプロポーズの言葉が胸を打つ。
ふたりを引き合わせ繋いだのは前世の約束が影響しているからだとしても、私たちはそれに縛られてではなく、互いの意思で互いを選んだのだ。
返事はただひとつだけ。
「末永く、お願いします」
人の理から外れることになっても、あなたと共に生きてくと決めたから。
「玉椿、八千代を掛けて、家門広く、家名高く、弥立栄えしめ給へ」
猿田彦様の温かな言祝ぎの中、ミヅハは幸福に満ち足りた笑みを浮かべ、そっと唇を重ねた──。