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 愛する者の死に絶望し、涙を流す千枷の姿に耐え切れず唇を噛んだ。
 龍芳としての生を終え、ミヅハとして生まれ変わっても、自らが残した約束と前世の記憶はしっかりと残っている。
 だが、千枷の最期がどうだったのかを実際に目の当たりにしたことはなかった。

「……生きて、欲しかったんだ」

 干汰も大角も側にいる。
 千枷なら乗り越えて生きていくと思っていた。
 縁が手放すはずがないと。
 だが……縁はこの時すでに、人の心を失いかけていたのだろう。
 故に、凶行に至ったのだ。

「あのっ、ミヅハさん、干汰さんたちが豆吉さんに会えました! それらしき場所があるそうです!」

 豊受比売さんの声に、俺は弾かれるように映像から視線を外した。

「今、豆吉さんの案内で向かっています」

 大角が干汰を背に乗せ走っているのだろう。
 マップのアイコンが猛スピードで山の中を動くのを見ながら、豊受比売さんが状況を説明してくれる。

「それらしきとは?」
「島路山に、あやかしも動物も寄り付ない重苦しい場所があり、よく見ると蔦の這った祠がひっそりと建っているらしいです」

 さらに聞くと、そこは十数年前から時折黒いモヤが纏わりついて、何かを探すようにウロウロと山を彷徨うこともあったそうだ。

 黒いモヤと聞いて思い出すのは、事故の際、いつきが目撃したモヤ。
 もしそれが本命なら、呪詛はいつきと俺が出会ったのを感じ取り、縁から与えられた役目を果たすべく動いていたのかもしれない。
 ともかく、最後の時は刻々と迫っている。

「頼むぞ……」

 当たりであれと願っていると、瀬織津姫が「ミヅハ」と俺を呼んだ。